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2013年5月

2013年5月30日 (木)

電事連の津波想定値切り その3

20002月の総合部会議事録に、当時最新の手法で津波想定を計算した結果が報告されている[i]

 

津波想定に誤差が生じることを考慮して、想定の1.2倍、1.5倍、2倍の水位で非常用機器が影響を受けるかどうか分析している。福島第一は想定の1.2倍(O.P.+5.9m~6.2m)で海水ポンプモーターが止まり、冷却機能に影響が出ることがわかった。

 全国に当時あった原発57基のうち、1.2倍の高さの津波で影響が出てくるのは福島第一のほかには島根原発(中国電力)だけだった。津波に対して全国で最も余裕の無い原発であることが、明らかにされたわけだ。この結果は、通産省にも報告されていたと思われる。

 女川(東北電力)、福島第二、東海第二の各原発は、最新の手法で津波を想定し、さらにそれを1.2倍した水位でも影響はないと判断された。今回の大震災で、福島第一だけに大きな被害があった背景には、この「津波に対する余裕の無さ」がある。

[i]

[東京電力福島原子力発電所事故調査委員会]

国会事故調 参考資料 P.41

 

2013年5月29日 (水)

電事連の津波想定値切り その2

 19976月の電事連総合部会会議に提出された報告書「7省庁による太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査について」は、当時の原発における津波対策についてもう一つのポイントを指摘していた。

             

 (2)津波数値解析計算の不確定さの指摘

〇この指針では、津波数値解析は技術的に開発途上にあり、精度と再現性に関して不確定な部分が多く、津波数値解析の計算結果は相対的な評価の基礎となり得ても、絶対的な判断を下すにはまだ問題が残されていると指摘している。

〇この報告書で行っている津波予測は、原子力の津波予測と異なり津波数値解析の誤差を大きく取っている。

 

 ここで述べているのは、津波計算にはまだ誤差が大きい、ということだ。「7省庁津波」を策定した委員や通産省資源エネルギー庁で原発の安全審査を担当する大学教授らが「津波数値解析の精度は倍半分」と発言していることも、電事連議事録に残されている。要するに、6mの津波と計算結果が出ても、実際の津波は12mかもしれず、3mかもしれない。津波の数値計算の精度はその程度ものだということだ。

 このことは、はからずも東日本大震災で実証されてしまった。福島第一を襲った津波は約13mと推定されている[]が、数値解析ではこれほど高くならないのだ。東電は大震災後、GPSによる海底の動きなど、これまでにないほど精密なデータを入力して津波高さを計算したが、福島第一になぜ13mもの津波が来たかはいまだ説明できていない[]。原発構内に到達した津波の様子を広域再現モデルではシミュレーションできず、根拠もないまますべり量を1.25倍しているのだ。

 

 通産省は、当時の原発が想定される最大津波を考慮していないこと、津波数値解析の精度が悪いことを公にせず、秘密裏に対策を進めようとしていたことも、議事録に残されている。

〇MITI(通産省)は当面、③の想定し得る最大規模の地震津波を東通をはじめとする申請書には記載しない方向であるが、顧問会においてはそれぞれの検討結果を報告することを考えている。

〇MITIは、(中略)仮に今の数値解析の2倍で津波高さを評価した場合、その津波により原子力発電所がどうなるか、さらにその対策として何が考えられるかを提示するよう電力に要請している。

             

 当時は、新設原発の申請が相次いでいた時期だ。「通産省は、想定し得る最大規模の地震津波を申請書に記載しない」というのは、新しい原発で最大想定津波の問題が露見すれば、既設炉に波及するのを避けたと考えられる。新設炉で、最新の方法で「最大規模の地震津波」を想定しているのがわかれば、すぐに「じゃあ、なぜ古い炉でそれを想定していないの」ということになるからだ。

 原発事故の14年前、1997年の時点で、電事連は、①古い原発が最大規模の津波を想定していないこと②数値予測より2倍の津波が来る可能性があることを知っていたことがわかる。このときから古い原発の津波対策を進めていれば、東日本大震災までには十分対応が終わっていただろう。

 ところが電事連が決定したのは、噴飯ものの内容だった。

〇ばらつき(数値予測の誤差)を考慮しなくてよいとのロジックを組み立て、MITI顧問の理解を得るよう努力する。

 数値予測にばらつきはつきものだった。それを見込んで余裕を持って津波対策をする必要があった。ところが電事連は「ばらつきを考慮しなくてよいとのロジックを組み立てる」という解決方法を思いついた。机上の空論なら費用もいらぬ。その具体化は、土木学会の名を借りて行われることになる。

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[東京電力株式会社, 2012]

P.9

 

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[東京電力株式会社, 2012]

添付3-10

2013年5月28日 (火)

電事連の津波想定値切り1

電気事業連合会は、北海道電力から沖縄電力まで全国の電力10社が加わる電力会社の業界団体だ。1952年に発足し、事務局は東京・大手町の経団連会館の中にある。

「電力会社間の緊密な対話と交流をはじめ、新しい時代の電気事業をつくり出していくための創造的な意見交換の場として貢献してきました」(電事連HP)。

 歴代17人の会長のうち、8人は東電の社長・会長が勤めてきた。東日本大震災の後、20114月までは清水正孝・東電社長(当時)が会長を務めていた。現在は八木誠・関西電力社長に代わっている。

 電事連には各社から担当者が集まり、電力業界として意見をまとめて政府との交渉窓口になってきた。電事連事務局には、原子力部、立地環境部、電力技術部など10部ある。

 

事務局と会議の組織

Photo Photo_2

電事連のホームページから

原子力部が担当する「原子力開発対策委員会総合部会」には、各電力会社の常務クラスが月1回集まり、原発の技術や施設、燃料の問題について話し合っている。19987月に第298回が開かれているので、単純計算すると1970年代初めから続いているようだ。

 国会事故調が明らかにした総合部会議事録によると、1997年ごろから津波の問題がしばしば取り上げられている。電事連が津波対策を骨抜きにしてきた経緯を読み取ることができる。

 

●他省庁の動きに危機感

 

 電力業界は、通産省以外の省庁によって津波の予測方法が更新される動きを警戒していた。古い原発が用いている方法より、更新された予測方法による津波予測が大きくなれば、すぐに上回るからだ。それによって対策が強いられることを恐れていたのだろう。電事連の総合部会議事録(19976月)は、警戒心を露にしている。

 この報告書(7省庁手引き)では原子力の安全審査における津波以上の想定し得る最大規模の地震津波も加えることになっており、さらに津波の数値解析は不確定な部分が多いと指摘しており、これらの考えを原子力に適用すると多くの原子力発電所で津波高さが敷地高さ更には屋外ポンプ高さを超えるとの報告があった。[]

 「7省庁手引き」とは、1997年にまとめられた「太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査報告書」「地域防災計画における津波対策の手引き」(農林水産省、運輸省、建設省など策定)を指す[]1993年の北海道南西沖地震津波で奥尻島で津波による大きな被害があったことをきっかけに中央省庁で津波対策を再検討してまとめたものだ。

 19976月の電事連総合部会会議録には、電事連内部の作業チームが作成したと見られる詳細な報告書「7省庁による太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査について」が添付されており、ここでは原発が津波想定でかかえていた具体的な問題点が明らかにされている。報告書を読み解いてみる。

 

 2.問題点

 (1)想定しうる最大規模の地震津波も検討対象

〇現在、原子力の安全審査における津波は、①既往最大津波、②活断層により発生することが想定される地震津波を検討対象にしているが、この指針ではさらに③想定し得る最大規模の地震津波も加えている。

〇報告書では③の具体例として、プレート境界において地震地体構造上考えられる最大規模の地震津波も加えている。

〇この考えを原子力発電所に適用すると、一部原子力発電所において、津波高さが敷地高さを超えることになる。

             

 この記述からわかる重要な点は、このころまでに作られた原発のほとんどは、「想定し得る最大規模の地震津波」を考えずに設計されていたということだ。前述のように福島第一の場合も、60キロ離れた小浜港で1960年に観察されたチリ津波の記録を、最大の想定として設計している。津波を想定する科学・技術が進んで、「想定し得る最大規模の地震津波」を計算することが可能になってきて、それへ対処する必要があることにこの時点で気づいていたのだ福島第一の場合は、③の具体例として挙げられている「プレート境界において地震地体構造上考えられる最大規模の地震津波」が、2002年に地震本部が警告した高さ15.7mの津波だった。



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[東京電力福島原子力発電所事故調査委員会]

国会事故調 参考資料 P.43

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[農林水産省構造改善局、農林水産省水産庁、運輸省港湾局、建設省河川局, 1997]

2013年5月15日 (水)

敦賀原発の活断層調査をした1965年の報告書

いま問題となっている敦賀原発の敷地を走る断層が、活断層なのかどうなのか。

当時のそうそうたる研究者がまとめた報告書が、国会図書館にあった。
敦賀原子力発電所建設地点の地形・地質調査報告書 昭和40年9月
http://yahoo.jp/box/4AX9kP
東京大学名誉教授 津屋弘達
東京大学名誉教授 多田文男
資源総合開発研究所長 鈴木好一
P.75 3.結論
1)原子炉設置予定地点の花崗岩中に見られる小破砕帯は第三紀以前に生成したものであり、洪積世の少なくとも中期以後に運動した形跡はなく、今後運動する見込みもまずないといえる。浦底地溝を形成した地形学的断層にしても、洪積世中期以後に運動した形跡がないので、今後運動する可能性は少ない。
浦底断層が活断層だと原電が認めたのは2008年になってから。そして今回、原子炉建屋の下の破砕帯も活断層と認定された。この報告書から約半世紀たつ。どこを間違えて「活断層でない」と判断したのか、当時としてはいたしかたなかったのか、それともずさんな判断だったのか、検証してほしいものだ。
おまけに国会図書館にあったこの報告書、肝心な一部のページがほかの報告書のものと入れ替わっていて読めない。どこかにまともなものが残っていないだろうか。

2013年5月10日 (金)

原子力安全功労者

 原子力安全功労者表彰は、エネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保のために尽力し、優れた成果を挙げた個人又は団体を経済産業大臣が表彰し、もって関係者の意欲向上及び原子力の安全の確保に対する国民の理解の増進に資することを目的とする

 平成21年度原子力安全功労者のプレスリリースより


1981年の創設から、2010年までの受賞者リストのファイルを規制庁からもらったので載せておきます。福島事故のあと中断中。地震分野でどういう人がもらっていたか見ると興味深いです。いわば戦犯リスト。「kourousha.pdf」をダウンロード
 
 

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