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2013年5月29日 (水)

電事連の津波想定値切り その2

 19976月の電事連総合部会会議に提出された報告書「7省庁による太平洋沿岸部地震津波防災計画手法調査について」は、当時の原発における津波対策についてもう一つのポイントを指摘していた。

             

 (2)津波数値解析計算の不確定さの指摘

〇この指針では、津波数値解析は技術的に開発途上にあり、精度と再現性に関して不確定な部分が多く、津波数値解析の計算結果は相対的な評価の基礎となり得ても、絶対的な判断を下すにはまだ問題が残されていると指摘している。

〇この報告書で行っている津波予測は、原子力の津波予測と異なり津波数値解析の誤差を大きく取っている。

 

 ここで述べているのは、津波計算にはまだ誤差が大きい、ということだ。「7省庁津波」を策定した委員や通産省資源エネルギー庁で原発の安全審査を担当する大学教授らが「津波数値解析の精度は倍半分」と発言していることも、電事連議事録に残されている。要するに、6mの津波と計算結果が出ても、実際の津波は12mかもしれず、3mかもしれない。津波の数値計算の精度はその程度ものだということだ。

 このことは、はからずも東日本大震災で実証されてしまった。福島第一を襲った津波は約13mと推定されている[]が、数値解析ではこれほど高くならないのだ。東電は大震災後、GPSによる海底の動きなど、これまでにないほど精密なデータを入力して津波高さを計算したが、福島第一になぜ13mもの津波が来たかはいまだ説明できていない[]。原発構内に到達した津波の様子を広域再現モデルではシミュレーションできず、根拠もないまますべり量を1.25倍しているのだ。

 

 通産省は、当時の原発が想定される最大津波を考慮していないこと、津波数値解析の精度が悪いことを公にせず、秘密裏に対策を進めようとしていたことも、議事録に残されている。

〇MITI(通産省)は当面、③の想定し得る最大規模の地震津波を東通をはじめとする申請書には記載しない方向であるが、顧問会においてはそれぞれの検討結果を報告することを考えている。

〇MITIは、(中略)仮に今の数値解析の2倍で津波高さを評価した場合、その津波により原子力発電所がどうなるか、さらにその対策として何が考えられるかを提示するよう電力に要請している。

             

 当時は、新設原発の申請が相次いでいた時期だ。「通産省は、想定し得る最大規模の地震津波を申請書に記載しない」というのは、新しい原発で最大想定津波の問題が露見すれば、既設炉に波及するのを避けたと考えられる。新設炉で、最新の方法で「最大規模の地震津波」を想定しているのがわかれば、すぐに「じゃあ、なぜ古い炉でそれを想定していないの」ということになるからだ。

 原発事故の14年前、1997年の時点で、電事連は、①古い原発が最大規模の津波を想定していないこと②数値予測より2倍の津波が来る可能性があることを知っていたことがわかる。このときから古い原発の津波対策を進めていれば、東日本大震災までには十分対応が終わっていただろう。

 ところが電事連が決定したのは、噴飯ものの内容だった。

〇ばらつき(数値予測の誤差)を考慮しなくてよいとのロジックを組み立て、MITI顧問の理解を得るよう努力する。

 数値予測にばらつきはつきものだった。それを見込んで余裕を持って津波対策をする必要があった。ところが電事連は「ばらつきを考慮しなくてよいとのロジックを組み立てる」という解決方法を思いついた。机上の空論なら費用もいらぬ。その具体化は、土木学会の名を借りて行われることになる。

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[東京電力株式会社, 2012]

P.9

 

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[東京電力株式会社, 2012]

添付3-10

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