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2013年6月

2013年6月29日 (土)

ムラの専門家たち

1)原発のリスク評価やリスク管理を捻じ曲げた、もしくはそれにお墨付きをあたえてきたのは、原子力ムラに関わる科学者や専門家たちだ。福島第一の津波リスクでは土木学会が主犯だ。新潟知事が危惧するように、そのような「ムラの組織文化」の検証・総括はなされていない。
2)ムラの専門家会合の特徴は非公開、非透明な「密室の合議」(藤垣裕子、『専門知と公共性』)だ。意思決定にかかわるメンバーの選択、議事からの報告書作成、報告書を実際の意思決定や施策にどう使うか、それぞれのプロセスは明文化、明確化されないまま「空気」が支配する。
3)原発の津波評価をした土木学会の部会を具体的に見てみよう。メンバーは半数以上が電力社員。電事連の内部作業チームがそのまま学会の名を騙っている。議事録は事故のあとに初めて公開された。津波評価研究のための費用や基準作りにかかる費用(約2億円)はすべて電力会社持ち。
4)土木学会の定めた手法の2倍以上の津波が福島第一を襲った。土木学会は「民間指針等とは性格を異にしており,事業者に対する使用を義務付けているものではありません」。一方、東電は「国内の標準的な津波評価方法として定着し、規制当局へ提出する評価にも使用されている」。責任の押し付け合い。
5)土木学会手法を、施策や規制でどのように使っていくか明確にしていなかった。だから責任も明確にできないという、実にうまい、日本的な仕組みになっていた。とはいえ先に述べたように、土木学会とはいっても内実は電力業界だったのだが。
6)土木学会手法の最大の問題は、安全率を考慮しなかったことだ。だから予測した水位のわずか数センチ上に、水をかぶると機能しなくなる非常用ポンプのモーターが設置されていた。予測の精度は「倍半分」と認識していたにもかかわらず、設備側に安全率を見込まないのは専門家としてどうなんだ。
7)当時、保安院の審議官は東電に「よく枕を高くして寝られるね」といやみをいっていたほどだ。土木学会の審議メンバー今村文彦・東北大教授は「安全率は危機管理上重要で1以上が必要との意識はあった」と政府事故調に述べている。しかし主査が研究室のボスだったから、事故前には言えなかったのか。
8)数値予測の精度が倍半分であることは電力業界も承知していた。安全率2倍として規制されたら既存原発がどういう影響を受けるか、土木学会の審議の前にあらかじめシミュレーションしてあった。2倍になると運転できないサイトが続々判明。特に福島第一と島根は1.2倍でもアウト。
9)だから安全率1倍は、工学的判断ではなく、経営的にすでに決まっていたことだった。それを土木学会の名をつけて「オーソライズ」した。「土木学会でオーソライズ」という表現は、電事連の議事録にも登場する。安全率切り下げのために、土木学会ブランドを2億で買った。安いものだ。
10)という具合に、原子力ムラは「密室の合議」を責任逃れの場として上手に使ってきた。シビアアクシデント対策の不備、電源喪失対策の不備でも、同様の構図がある。それは改善されたのか?。防潮堤さえ高くすれば再稼動しても大丈夫なのか。
11)だいたい、原子力学会が福島事故の検証を「非公開」で進めている時点で、彼らの生態に大きな変化がないことはすぐわかる

講義スライドの出典

近藤駿介・原子力委員会委員長の「最悪シナリオ」
放射線量等分布マップ
産総研の岡村行信活断層・地震研究センター長が貞観の津波を警告した会合
総合資源エネルギー調査会原子力安全・保安部会耐震・構造設計小委員会
地震・津波、地質・地盤合同WG(第32回)議事録
http://www.nsr.go.jp/archive/nisa/shingikai/107/3/032/gijiroku32.pdf


福島第一・第二原子力発電所 津波の検討について 平成6年3月 東京電力株式会社
「h6.pdf」をダウンロード
土木学会原子力土木委員会平成12年度第6回(2000年11月3日)議事録
http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/system/files/tnm_12_6.pdf

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