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2013年9月20日 (金)

石井教授の計算間違い

福島市の放射能対策アドバイザー、東北大の石井慶造教授は低線量被ばくに「しきい値」が存在すると言う。根拠を尋ねたら、高校生にもわかる、ただの計算間違いだった。本人はいまだにお認めにならないが、市のアドバイザーとして適任とは考えられない。 http://p.tl/TC_t

石井教授は、「東日本大震災を分析する1」(東北大学災害科学国際研究所編、2013 P.237)で、こう述べている。
「ICRPの仮説(しきい値なし)に基づいて計算すると、日本においては年間57万人のがん患者が自然放射線の被曝により発生することになる」
「一方、毎年67万人のがん患者が見つけられ、これらは主に喫煙、病原菌、飲酒、塩分摂取、肥満等が原因であるのに、主原因は自然放射線となり矛盾する。従って、低線量被曝においては100mSv年以下のどこかにしきい値が存在していることになる」

自然放射線で年57万人って多いなあ、どういう計算なんだろうと思って尋ねたら、東北大広報を通して返答があった。

以下、石井教授からの回答

2シーベルトあびるとがんになる確率が10分の1となると仮定されているので、平均年2.1ミリシーベルトでは、これの1000分の1となりますので、毎年、がんになる確率は1万の1となります。被ばく線量は毎年、加算され、癌になるリスクもそれに伴って加算されていくとICRPは仮定しておりますので、従って、80歳の人は、80年×10000分の1の確率でがんになることになります。仮に、日本人の人口約1億3000万人の年齢分布が1歳から80歳まで同じ分布とすると各年代当たり162万人となるので、日本人全体で毎年がんになる予測人数は

162万人×1歳×1/10000+162万人×2歳×1/10000+--
-+162万人×80歳×1/10000=
162万人×(1+2+-----+80)×1/10000=
162万人×3240×1/10000=52万人

となります。本書の57万人は、実際の日本人の人口の分布から求めたものです。
という返答だった。

これは、生涯のリスクの数値を、年あたりのリスクとして計算に使っている単純な間違い(別の専門家二人にも確かめた)。ということを、石井教授になんども伝えたが認めない。憶測だが、シロウトに指摘されたのがいやだったんだろう。

そもそも石井教授は、こんな簡単な計算で閾値なし仮説が否定できるなら、とっくに誰かがやってるだろう、とは想像しなかったんだろうか。

福島市に、「LNTをただの計算間違いで否定しているような人を放射能対策アドバイザーにするのは問題があるのではないか」と聞いたら、「石井先生は、東北大学大学院工学研究科量子エネルギー工学専攻生活環境早期復旧技術研究センター長ですから、適任です」という答えだった。

肩書きが長ければ立派と言うわけでもあるまい。論文を探してみると石井教授は放射線利用の方が専門で、リスクについて詳しいわけでもなさそうだ。大学の先生がトンデモを信じておられるのは自由なのでかまわないが、福島市のアドバイザーとして行政にそれが反映されるのは、市民にとってたまったものではない。

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